『PSA/DNAの実相4〜米国サイトから読み解く、その遠景』(事例29〜40)

このページでは、FBIによるPSAへの捜査情報、PSAによる鑑定失敗例などをいくつかご説明しています。

PSA社に対して、過去二度に渡ってFBI(アメリカ連邦捜査局)の捜査が行われてきたことは、同社の英語版ウィキペディアにも書かれておりますので、アメリカでは一般的によく知られている事ではあります。

https://en.wikipedia.org/wiki/Professional_Sports_Authenticator



■事例29 
ワシントン・ポスト紙、アメリカ連邦捜査局(FBI)によるPWCC社及びPSA/DNA社に対する捜査を報道する(2019年7月)。
 一部の熱心なコレクターからの情報提供により、米連邦捜査局(FBI)が10億ドル規模の産業である野球カード収集について捜査を行っていることが明らかになった。
 アメリカの大手新聞社ワシントン・ポストによると、鑑定会社、カードドクター、オークション会社が共同でカードを改造・評価した後、実際よりもはるかに高い価値で販売している疑惑で当局が捜査に着手している。一部のコレクターは、カリフォルニアに拠点を置く鑑定・認証会社Professional Sports Authenticator (PSA) が、カードドクターと呼ばれるゲイリー・モーザーの手によって加工された特定のカードに、それに相応しいよりも高いグレードを付けていたと主張している。そしてそのカードは、その実際価値よりも高い等級を与えられた上で、オレゴン州にあるオークション会社PWCCによって高値で販売されていた。一般人や熱心なコレクターが、加工によって傷つけられたカードを含むコレクションを所有していても、実際には購入した値段よりはるかに低い価値しかない可能性がある。
 PWCCでは、何百枚もの改ざん・トリミングされたカードが、PSAや他の大手鑑定会社による鑑定・認証を経た上、高値で販売されていた。この事を考えると、PSAがカードトリミングのスキャンダルに関与していたと多くのコレクターが感じても何ら不思議ではない。また、多くのコレクターが、不正なオークション業者が人々を欺くのをPSAが幇助し続けていたものと考えている。
https://www.washingtonpost.com/sports/2019/07/18/baseball-card-collectors-suspected-rampant-fraud-their-hobby-now-fbi-is-investigating/
https://www.usatoday.com/story/sports/2019/08/06/baseball-cards-has-latest-sports-trading-card-scam-been-uncovered/1929959001/
https://www.insidehook.com/daily_brief/sports/fbi-launches-fraud-investigation-into-world-of-baseball-card-collecting
https://www.blowoutforums.com/showthread.php?t=1390968

※解説
希少なスポーツカードに対して、「カードドクター」と呼ばれる特殊技術者が改ざん、加工など施してその価値を人為的に高め、依頼を受けたPSAやBGS(ベケット・グレーディング・サービス)などの鑑定会社がそれらに高い等級を施し、その提携オークション会社であるPWCCによって再販されるという手法で、不正な利益を挙げてきたことが明らかになっている。以下の検証サイト、「スポーツ・カード・ラジオ」によれば、実際には加工・偽造されていたカード、あるいは鑑定会社が本物と認証したもののの、実際には偽造されたサイン入りカードなど、PWCCによって販売された不正な商品数は確認されているだけでも数百点に及び、その累計金額は日本円換算で一億八千万円以上に及ぶものと目されている。
https://www.sportscardradio.com/alert-fake-trimmed-altered-graded-cards-by-psa-or-bgs/
https://www.sportscardradio.com/gary-moser-pwcc-marketplace-card-trimming-shill-bidding-scam/
以下はそうした手法の一例。
PWCCの開催するオークションから、PSAグレーディング済みの、1909年の希少なタイ・カップのカードが、2,138ドルで購入される。カードドクターと呼ばれる人物によって密かに加工が施されたこのカードに対し、PSAが以前より高い等級与えることによってその価額を高めさせた上で、再びPWCCによって出品され、何も知らないコレクターによって今度は5,655ドルで落札される。これによって関係者は実に3500ドル以上の利ざやを得ていることになるが、人の手によって密かに改竄、グレーディングを行ってカードの価値を操作するこうしたビジネス手法は、本当の価値への対価を支払ってきたコレクターを欺いていることになる。
https://www.blowoutforums.com/showpost.php?p=14746503&postcount=2621



同じく2012年秋に発出され、2015年夏に判決が下された、PSA/DNAにまつわるFBI捜査に関する情報

■事例30
AUTHOR: Dennis - (United States of America)SUBMITTED: Saturday, October 27, 2012 さんの投稿

 PSA/DNAはFBIによって調査されている。PSA DNAは、マストロネット・スポーツオークションとのスキャンダルに巻き込まれました。 これは、彼らが改ざん/偽造されたホーナス・ワグナーの野球カードを本物と鑑定し、グレーディングしたということです。
 シカゴの連邦大陪審が先月、スポーツメモラビリアの経営者ビル・マストロとダグ・アレンを詐欺罪で起訴したとき、多くのコレクターやディーラーが最初に思いついた疑問は、「PSAにとってこれは何を意味するのか」、というものであった。PSAはプロスポーツオーセンティケーター、世界で最も有名で高価な野球カード、NHLスター、ウェイン・グレツキーがかつて所有していたホナス・ワグナーT206 - 1991年に1〜10のスケールで8を宣言した南カリフォルニアのグレーディングサービス会社である。
  起訴状は、マストロがカードをトリミングしたと主張しており、それはかなり価値が低くなるであろう。マストロの弁護士は、彼のクライアントに対する訴訟は裁判なしで解決されることを期待していると述べており、マストロが当局に協力しているだけでなく、いずれ彼が本当にカードを改変したことを認めるだろうことを示唆している。私たちがT206ワグナーとホビー業界の腐敗について書いた本『The Card』で書いたように、このカードを鑑定したPSAのチームの一人は、カードがトリミング加工されていることを知っていたと認めたのである。
  先週ボルチモアで開催されたナショナル・スポーツコレクター・コンベンションを訪れた人によれば、FBIエージェントがボルチモア・コンベンションセンターの会社のブースでPSA社長ジョー-オーランドに聞き取りを行って多くの時間を過ごしていたのだという。PSAは、起訴状や我々の本や新聞記事にある疑惑について、公にはコメントしていない。オーランド氏とPSAの親会社コレクターズ・ユニバースのデビッド・ホール社長は、インタビューの要求に応えていない。しかし、ナショナルで行われたPSAの招待者限定の昼食会に参加した我々のスパイは、起訴状とカードに関する疑惑が主な話題であったと言う。
 また、そのスパイが言うには、提供されたチキンマルサラはなかなか美味しかったそうです。我々のスパイによれば、約150人のコレクターとディーラーが、金曜日にコンベンションセンターで開催された昼食会に参加していたとのことである。ホール氏は立ち上がり、この部屋にあ800ポンドのゴリラ(持ち上げても取り除くのが大変困難な、巨大な案件の比喩?)である起訴問題に対処しなければならない、と言ったそうだ。 今すぐに教えてください。あなたは、PSA/DNAを信頼しますか?

https://www.ripoffreport.com/reports/psa-dna/san-diego-california-92101/psa-dna-went-to-get-my-items-authenticated-at-a-psa-open-house-after-payimg-19000-they-853815
PSA stays mum about Honus Wagner T206 in public, but not in private - New York Daily News (nydailynews.com)



※2016年1月31日付のニューヨーク・デイリーニューズ紙より、上記記事の続報に基づく解説。
かつて”キング・オブ・メモラビリア”と呼ばれて巨額の財を築いたものの、野球カードの改ざんによる不正なグレーディングや、いわゆるサクラ入札による組織的な価格吊り上げ行為が発覚してFBIに摘発されたメモラビリアオークション会社、マストロ・オークション。同社のオーナーであるビル・マストロに対しては、2015年8月に禁錮20か月の実刑判決が確定。ニューヨーク・ヤンキースの共同オーナー、ハル・スタインブレナー氏や、アメリカの著名なニュースキャスター、キース・オルバーマン氏もこの会社の顧客として被害を受けたと言われている。
Keith Olbermann: 「Uh - the PSA/Gretzky Wagner was trimmed. It was the beginning of PSA and the day PSA forfeited all credibility. Card grading is a scam.」 / Twitter
(『カード・グレーディングは詐欺であり、PSAはあらゆる信用を失った』と呟くオルバーマン氏のツイッター)
2002年12月から2009年2月の間だけでも2,600件以上のサクラ入札がこのマストロ・オークションでは行われ、コレクターに対して与えた被害総額は190万ドル以上(二億数千万円以上)が確認されているが、実際の数字はこれをはるかに上回るものと目されている。
 裁判所の記録文書によると、スポーツメモラビリア業界では名の知られた人物を含む数十人が、このマストロ・オークションの行ってきた組織的なサクラ入札への協力者として特定されているが、これらの価格吊り上げ行為にはPSA/DNAの主要な鑑定人三名も加担していたことも判明している。

https://www.nydailynews.com/sports/yankees-owner-victim-mastro-auctions-shill-bidding-article-1.2514664





おまけ情報

■事例31 (深刻度★★☆☆☆) 
カトー・ケイリン氏のサイン、PSA/DNA社によって全く別人である女優のサインとして鑑定される。
1995年に起きたОJシンプソン事件の裁判の証人として全米から注目を集めた男性、カトー・ケイリン氏(Kato Kaelin)の書いたサインが、PSA/DNA社によってアカデミー賞にもノミネートされた女優、ケイト・ハドソン(Kate Hudson)の直筆サインであるとして認証された。この二人は性別も当然のことながら、本来、サインのパターン自体もまったく異なるものである。
https://ricaautograph.wordpress.com/

■事例32 (深刻度★★★★☆) 
六千ドル超で販売されたPSA/DNA社の認証済みブルース・スプリングスティーンの直筆サイン、レコード会社への確認によって印刷サインであることが判明する。
アメリカン・メモラビリアというオークションサイトで出品されたロットナンバー1の商品は、ブルース・スプリングスティーン「Born In The USA」RIAAプラチナアルバムのディスクで、ブルース・スプリングスティーンのサインが入っておりPSA/DNAによって本物であると認証されたというものでした。しかしこの商品は元々Rockaway Recordsという会社によって750ドルで販売されていたものであり、サイン部分は複製であると彼らが説明していることがわかります。この2つのアルバムの筆跡は完全に一致しています。
この同一商品が、アメリカン・メモラビリアのセールで、PSA認証済みのスプリングスティーンの直筆サイン入りという説明によって6060ドルで販売されました。私はアメリカン・メモラビリア社に返金を提案する手紙を書きました。以下は、この問題を警告するためにアメリカン・メモラビリア社に送った電子メールのコピーです。
写っている商品は、あなたが言うようなブルースの本物のサインではありません。これらの一つ一つに何百ものラベルが貼られていますが、それらは事前に印刷されただけのサインです。私はこれらのレーベルをいくつか持っています。スキャンしたものを添付します。PSA/DNAの判断は完全に間違っています。コロンビアレコードに連絡することを勧めてくれたシェリー・ジャッフェに感謝したい。以下はコロンビアから届いたメールの返信です。
【制作した会社がサインをスタンプしたもので、本物ではありません】
http://richardsimonsports.com/hofauto2.htm 
(UACC Registered Dealer, #108、リチャード・サイモン・スポーツからの情報)

http://www.auto-mania.com/html/newpage.html?code=40

■事例33 (深刻度★★★★☆) 
1966年に死去したはずの太平洋艦隊ニミッツ提督が1976年に書いたというサイン、PSA/DNA社によって本物と判定される。
PSA/DNAの鑑定人、ジェームズ・スペンス氏(現JSA社)とスティーブ・グラッド氏(現BAS社)、 第二次世界大戦の歴史を塗り替える。太平洋艦隊ニミッツ提督を鑑定する〜死後10年経過したドイツ降伏文書に署名する。
これは語り継がれるべき素晴らしい話だ。私たちが最終的に真実を知るまでに約60年かかったというのは、呆れるほどです。これは、語られるべき「戦争物語」なのです。これはカール・デーニッツ提督の直筆サインと76年7月27日という日付が入った、ドイツ降伏文書のコピー記念品です。総統ヒトラーの死の直後、非常に驚いたことに、突如としてデーニッツはドイツ国家のトップという立場になってしまった。そして連合国へのドイツ軍の降伏交渉は、このデーニッツに任されることになった。
だが、PSAの「専門家」であるジェームズ・スペンス氏とスティーブ・グラッド氏は、PSA/DNA鑑定書に署名している。この「専門家」たちは、この降伏文書コピーへのサインが、ドイツのデーニッツではなくチェスター・ニミッツによってサインされたものであると述べている。これは、ヨーロッパ戦線でドイツ軍を連合国に降伏させたのが、太平洋艦隊で日本軍と戦っていた我らがニミッツ提督であったことを発見する最初の機会である。驚くべき歴史的発見である。しかも信じられないことに、彼は死後10年以上経ってから、このコピーにサインと日付を入れることができたのだ。この文書は、アメリカ艦隊司令官チェスター・ニミッツがドイツ軍を連合国に降伏させたこと、そしてサインするために死から蘇ったことを世界に伝えるものである。歴史が書き換えられ、PSA/DNAによって認証され、429ドルという低価格で提供されています。
http://www.fighttoys.com/lawsuit%20nimitz%20letter.htm
https://www.globalinvestigativegroup.com/document-authentication
※太平洋戦争において山本五十六と対峙した事でも知られる、アメリカ太平洋艦隊司令長官、チェスター・ニミッツ提督。1966年に亡くなっているはずのこのニミッツ提督が、なぜか1976という日付を入れて、しかも本人とは全く無関係のドイツの歴史的文書の写しにサインをしたものである、とする筆跡鑑定書をPSA/DNAが発行してしまったという、とんでもない失敗例です。実際にはこの筆跡はニミッツ氏のものではなく、ドイツ降伏時の国家元首カール・デーニッツ氏によるものであり、本人にゆかりのある歴史的文書のコピーに、日付を入れてサインしたものです

■事例34(深刻度★★★★☆) 
PSA/DNA社が本物と判定したマイケル・ジャクソンのサイン、海外サイトで大きな物議を醸す。
誰も見たことがないような筆跡パターンのマイケル・ジャクソンのサインをPSA/DNAが本物と認定していることに対して、アメリカのサインコレクターが集まるサイトでは大きな盛り上がりを見せている。
https://autographmagazine.ning.com/forum/topics/michael-jackson-psa-fake
https://autographmagazine.ning.com/photo/t2ec16n-zefiejk44fgbswlb1hibq-60-57
https://autographmagazine.ning.com/forum/topics/michael-jackson-1500-psa-dna-forgery
https://storage.ning.com/topology/rest/1.0/file/get/110091470?profile=original
以下は寄せられているコメントの一部。
「このマイケル・ジャクソンの偽サインを見てもわかるように、PSA/DNAは、彼らの意見が本当に間違っていることがある会社だということが証明されました」
「これは、かなり哀れです」
「正直言って、今まで見た中で最悪のマイケルジャクソンの贋作だと思います。」
「MJのパターンを全く学習していない私ですが、これはすぐに贋作だとわかりました。」
「ハハハハ!あの会社は本当にふざけた会社だな!」
「悲しい」

■事例35 (深刻度☆☆☆☆☆被害なし) 
サインの何も入っていないメジャーリーガー実使用の木製バット、PSA/DNA社によって「本物のサイン入りバット」として鑑定される。
この話は、ジム・キャラヴェロにさせてください。"最近、50年代のアメリカンメモラビリアオークションでアーニー・バンクスのゲーム使用済みバットを落札しました。ちなみに私が購入したバットは、何もサインが入っていないものです。信じられないような木製のバットで、落札できてこれ以上嬉しいことはありません。このバットには、実試合使用品の検査会社であるタウベとマルタの証明書が付いていました。そしてアメリカン・メモラビリア社から、「このアーニー・バンクスのバットに書かれている直筆サインは本物である」というPSA/DNAの鑑定書が届きました!いったいどういうサインなんだよ? オークションのカタログを見ても、それがサイン入りのバットであるなどとは何も書かれていない。このバットにはアーニー・バンクスのサインがどこにも書かれていないのに、どうしてPSA/DNAの鑑定書があるんだよ!!! なんというジョークだ! 現在、PSA/DNAは目に見えないサインまで鑑定しているようです。こちらがその証明書です。
http://www.auto-mania.com/html/newpage.html?code=39
出展 http://richardsimonsports.com/hofauto2.htm
(UACC Registered Dealer, #108、リチャード・サイモン・スポーツからの情報)



■事例36(深刻度★★★★☆) (※画像あり)
PSA/DNAが本物であると筆跡鑑定したマハトマ・ガンジー直筆サイン、18年の時を経て、PSA/DNA自身によって偽サインであると鑑定される。
https://theautographplanet.com/3rd-party-authentication
http://www.auto-mania.com/html/page55.html
2006
年2月21日に米国のヘリテージ・オークションにおいて落札されたインド独立の父、マハトマ・ガンジー直筆サインは、PSA/DNA社が本物であると鑑定した上で販売されたものである。ところが18年後に所有者によって再び同社に鑑定に出されたところ、2024年1月24日、PSA/DNA社によって「これは偽サインである」、と鑑定されたことが明らかになっている。自社が本物であると認めたはずのサインが、コンディションは何も変わっていないのに、18年の時が経過すると何ゆえに偽サインということになってしまうのだろうか?このような不可解なケースに関しては、PSAの鑑定は絶対的であると発信しているような人々に説明を求めてみるのが最良の方法なのかもしれない。もっとも、オートグラフの歴史を知り尽くすこの記事の筆者は、このように綴っている。
「このような出来事はあくまでも氷山の一角に過ぎません」

※それでは、そのような「氷山」は一体どこにあるのでしょうか?
以下のサイトは、オートグラフ業界の事情通の間ではつとに知られている、鑑定会社の犯してきた膨大なミステイクの歴史を記録しているアーカイブ的なサイトです。四半世紀に渡ってオートグラフビジネスに携わり、その間、様々なニュースを眺めてきた当店にとっては特段驚くような話でもありませんが、上記と同様の不可解判定や鑑定ミスの実例がこれでもかとばかりに列挙されています。
https://haulsofshame1.rssing.com/chan-11254457/all_p5.html
例えば、PSA, JSAなどの鑑定サービス会社が「これは本物のサインである」と鑑定し、オークション会社を通じて数百万円単位の超高額な価格帯で落札されたベーブ・ルースのサインボールを、何年後かに再鑑定に提出すると、今度はなぜか「これは偽サインである」とする鑑定結果を伝えてくる、といった実例が多数掲載されています。尤も、ここで紹介されているものは金額的にも比較的重篤なケースのみであり、また、氷山の全てがここに記録されているわけでもありません。PSA, JSAのような、あらゆるサインの筆跡鑑定を受付けしては膨大な数のミステイクも積み重ねてきた鑑定会社にとって、今回のガンジーのようなケースはさして珍しいことではないことがよくわかります。そして利用規約において真贋意見の保証を拒否することや、鑑定ミスの場合でも責任は一切取らないことを明記しているその理由についても、理解が及ぶことでしょう。

■事例37(深刻度★★★☆☆) (※画像あり)
トップス社が販売したメジャーリーグの名投手ジャスティン・バーランダーの印刷サイン入りMLBトレーディングカード、PSA/DNAによって本物の直筆サインであるとして鑑定・認証される。
https://theautographplanet.com/3rd-party-authentication
http://www.auto-mania.com/html/page56.html
https://www.amazon.com/Topps-Baseball-Through-Verlander-Official/dp/B08XGJ5HQN
2021年に発売されたジャスティン・バーランダーのベースボールカード(#tty-29)の裏面には、 販売元のトップス社によって表面のサインが直筆ではなく印刷であることが二度に渡って注意書きが施されている。にもかかわらず、PSAは対価を受け取った上で、これを「本物の直筆サイン」として認証してしまっている。いったいどのようなチェック体制があれば、このような鑑定結果がもたらされるのだろうか。尤もこのような場合であっても、PSA社はエラーの責任は一切負わない旨、利用規約には説明している。


■事例38(深刻度★★☆☆☆)
PSA/DNAが偽サインであると筆跡鑑定した元NFL選手、ロス・ブラウナーの直筆サイン、本人からの叱責によって「本物のサイン」へと鑑定結果が変更される。
Midland, Texas Jun 28, 2019
PSA DNA and JSA are jokes totally (PSAとJSAは完全にジョークである)
https://psa-dna.pissedconsumer.com/5/RT-P.html#reviews
私はシンシナティ・ベンガルズやノートルダム大学でプレーしていたアメリカンフットボール(NFL)の元スター選手であるロス・ブラウナーの親友です。彼は私の所有しているヘルメットにベンガルズ以外の選手のたくさんのサインとともにサインをしてくれた。その時の写真もある。彼がサインしている際の映像も持っています。しかしPSA/DNAに鑑定に出してみたところ、彼らはそれらが疑わしいサインであると私に伝えてきた。私がロス本人にそのことを伝えると、彼はPSAに直接電話をかけ、「オレたちはそのヘルメットにちゃんとサインをしたんだ!」と怒鳴りつけなければならなかった。すると今度はこれは本物のサインである、という鑑定書がPSAから私の元に送られてきた。いい加減にしろ!


■事例 39(深刻度★★☆☆☆)
投資家のウォーレン・バフェット氏の親友が本人から直接もらった直筆サイン、PSA/DNAによって偽サインと鑑定される。
 May 31, 2023
https://psa-dna.pissedconsumer.com/review.html
私はこの2月にPSAにウォーレン・バフェットの直筆サインが入った一ドル紙幣を提出して鑑定を試みたのだが、そのサインの真正性は疑わしいというオンライン通知を受け取った。私はこのサービスに対してこのペテン師たちに150ドルを支払っている。私の手元に商品が返送されると、「このサインは本物ではない」と書かれたレターが入っていた。実に滑稽な話である。ウォーレンと私は47年来の付き合いで彼の家には何度も遊びに行っている間柄であり、それは私の目の前でサインされたものである。PSAが鑑定にいったい何を使っているのか、サインを鑑定する為の何かの資格を持っているのかはよく知らないが、自分たちが何をやっているのかわかっていない。他の人たちのレビューを読むと、彼らは鑑定するアイテムの中のどれぐらいを真正品として判定し、どれぐらいの割合は偽物として判定する、というノルマが与えられているようにも思える。彼らはサインを眺めることさえしていないのでは、と思う。この会社は詐欺的で、返金してもらおうとすると、私たちは真贋鑑定作業を行ったと言って拒否してくる。こんな会社は潰れるべきである。このような会社を利用することは二度とないだろう。

■事例 40 (深刻度★★★★★)
公式サイン会という説明によって四百人以上に予約販売されたイアン・マッカラン氏のBAS社鑑定済み直筆サイン、本人によって全て偽サインであることが確認される。
https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/news/ian-mckellen-autograph-fake-b2012941.html
Sir Ian McKellen warns Lord of the Rings fans of autograph imposter after Kent-based promoter 'duped' (kentonline.co.uk)
http://www.auto-mania.com/html/page54.html
その犯人は頭には帽子を、顔にはマスクを被って『ロード・オブ・ザ・リング』のスターに変装し、"公式サイン会 "で400人のファンからお金を騙し取っていた。カナリー・ワーフで偽のマッカラン氏にサインをしてもらうために、彼のファン達は75ポンドから100ポンドを支払っていたと報じられている。サイン会の主催者は、偽マッカランがサインする間、建物の外で待たされていた。サインされたアイテムには直筆サインの鑑定・認証サービスを行っている米国のベケット社(BAS社)が本物であることを確認した旨の認証ラベルが貼りつけられ、ファンに向けて発送された。しかしながら届いたサインを見たファンたちが筆跡がおかしいことに気付き、イベントの主催者であるSmugglers Entertainments Ltd.にクレームを伝え始めた。やがて本物のマッカランが連絡を受けた後、2022年2月10日、彼はツイッターでファンに向けて、このイベントが詐欺であったことを確認する旨の声明を発表した。
「私に成り済ました男と、私の代理人を装った2人の女性が、最近ケント州のプロモーターにイアン・マッカランの "プライベート・サイン会 "のオファーを持ちかけていることを知りました。この詐欺的人物にサインしてもらうために写真や品物を送ってしまった人には大変申し訳なく思っています。はっきりさせておきますが、私は有料のサイン会に参加したことはありません」

※少なからぬ数のファンが、届いた商品が怪しいサインであることを見抜いたにもかかわらず、筆跡鑑定のプロを称しているはずのスティーヴ・グラッド氏(元PSA/DNA鑑定人。現在はBAS社に移籍)は、それらを全て本物であると鑑定してしまったようです。結果的に偽マッカラングループの詐欺行為の幇助をしてしまったわけですが、筆跡をチェックする作業自体を失念してしまったのでしょうか?


■米国レビューサイトへのゲートウェイ
 既にご提供しているいくつかの記事で、PSAに対して寄せられている口コミに関しては大量に翻訳済みです。こうした内容は本来、ご自身でお調べ頂くべきものですので、当店ではPSAの同業他社であるJSA, BASの情報については、コレクターの方々の判断材料となる、同様の5段階採点式の口コミサイトへのゲートウェイをここでいくつかご案内するに留めさせて頂きます。各サイトに書かれてある英文は、Google Chromeの翻訳機能などを利用して、どうぞ皆さまご自身での閲覧をお願いいたします。
※合計50件以上の口コミが投稿されているサイトをここではご紹介しています。

米国口コミサイト・SITEJABBERにおける、BAS(ベケット)社への口コミ
https://www.sitejabber.com/reviews/beckett.com

米国口コミサイト・YELPにおける、JSA(ジェームズ・スペンス)社への口コミ
https://www.yelp.com/biz/james-spence-authentication-jsa-parsippany?start=20

米国口コミサイト・PISSEDCONSUMER における、PSA/DNA社への口コミ
 (当店が既に一部翻訳済み)
https://psa-dna.pissedconsumer.com/7/RT-P.html



最後に。

オートグラフの世界に関する本物の見識は果たして何処にあるのか、誰の発する言葉が信ずるに足り、誰の発する情報が皮相浅薄なものなのか。膨大な情報の中から取捨選択し、購入先を選定するに際して様々な人物を的確に吟味、峻別すると同時に、日々、自らのリテラシーを高める努力を決して怠らない方。単眼的な視点ではなく、複眼的な視点を持つことの重要性をよく理解している方。当店ではそのような、知性溢れるお客様のご利用を心よりお待ちしております。

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